事例に基づくCDアプローチの再検証
人、組織、社会、さらには制度を包含した現在のキャパシティ・ディベロップメント(CD)の概念は、技術協力を中心とする援助見直しのための概念として、2000年頃から援助関係者において広く共有され、これに関する事例分析などが累次なされてきました。しかし、その多くは、主に援助実務の立場からの考察にとどまっており、経済学(新制度学派経済学など)、政治学、経営学、組織論などの関係諸学問分野の蓄積を踏まえたものとなってはいません。このような問題意識を踏まえて、本研究では、過去のCDに関する調査・研究のレビューを踏まえつつ、諸関係分野の分析枠組みのCDへの適用可能性を検討します。その上で、係る学術的な分析枠組みを踏まえたCD事例の比較分析を行い、もって JICA事業のより有効な実施に貢献することを目指します。
アフリカの村落給水組織と協調的地域社会形成に関する研究
本研究は、アフリカの村落給水組合の形成と安定的運営に関して、対象地域の社会制度(社会構成員の行為・思考を拘束する集合的表象・行動様式・行動規範)や経済構造、自然環境などが、利用者個人の集合行為実践にかかわる合理的判断や利用者間のネットワーク形成にどのような影響を与えているか(集合行為の論理)、そしてその結果、給水組合の機能、すなわち便益の配分、制裁の適用、紛争解決などを通じた集合財の供給にどのような影響を及ぼしているか(制度パフォーマンス)という問題について明らかにすることを目的とします。さらに給水施設が広範囲の地域社会住民に利用される財であるという観点から、給水組合の運営を通じた行政、地域住民、民間企業間の協働が、当該地域社会における一般的互恵関係や協調的地域社会形成(公共領域形成)につながる可能性についても考察します。
アフリカにおける灌漑開発と農民組織化に関する社会学的分析
本研究は、アフリカにおける潅漑開発の規模に応じた水管理・運営組織のあり方を、既存の潅漑開発事業(主に日本の支援により整備されたもの)の評価を通じて検討することを目的とします。具体的には、対象社会における基礎的食糧生産システム、社会関係資本を含む諸「資本」の賦存状況、伝統的水利・労働慣行、アクター間権力関係、行政組織能力等の観点から、水管理・運営組織の機能状況(水利費徴収、水管理、施設維持管理、紛争解決など)を検証し、事業規模、社会制度、行政能力に見合った水管理・運営組織のあり方を提示します。さらに水管理・運営組織を通じた行政、地域住民間の協働が、当該地域社会における一般的互恵関係や地方行政(国家)との共益関係を含む協調的地域社会形成(公共領域形成)につながる可能性についても考察します。焦点はマラウイなどアフリカ諸国であるが、研究蓄積のある日本やアジア諸国の経験との比較も行います。
JICA事業の体系的なインパクト分析の手法開発
本研究は、JICA事業のインパクトについて、計量経済学の手法を活用し実証データを用いて分析することによって、具体的に検証し、説明することを目的としています。分析の過程では、プロジェクトがもたらした効果の測定・推計に加え、インパクトの発現においてどのようなファクターが重要な役割を担ったのかを明らかにする手法についても研究を行います。本研究の当初の対象案件として、実施中のプロジェクト(教育及び保健分野から数件)を想定しており、これらのプロジェクトの進行に合わせて研究を進め、成果は事業実施にフィードバックしていくことを目指します。
援助等のリソース流入が国内投資に与える効果の研究
本研究は、援助などの資金リソース流入の有効性をマクロ実証分析で検証することを目的とします。具体的には、援助、海外労働者からの送金(remittance)、直接投資といった各種資金が国内投資を増強する効果を実証することを通じて、経済成長への援助の貢献の評価を試みます。また可能であれば本研究では、援助と他のリソース間のシナジー効果を評価するとともに援助のモダリティ間などのシナジー効果の分析も試みます。
援助のMDGsへのマクロインパクト計測
本研究では、MDGs(ミレニアム開発目標)達成に向けた援助のインパクトを、海外労働者からの送金(remittance)も含めて包括的に計量分析することによって、MDGs達成に向けた適切な援助戦略のあり方を探究します。インパクトの適切な計測により、現状を踏まえてのMDGsの各指標の到達度合いの予測が可能になり、またドナー全体として必要な援助量を地域別・国別に算出も可能となります。さらにMDGsの各指標達成に向けての各ドナーの貢献度合の算出や各ドナーの援助効率について評価も可能となります。
援助受入国から見たアジア新興ドナーのインパクト
これまで日本の援助の最大の供与先であったアジア諸国は、近年援助の受け手から後発国に対する供与国へと変化しつつあります。伝統的なドナーは、MDGs達成へ向けた新しい援助アクターとして、これら新興ドナーを歓迎しつつも、援助事業の調和化や被援助国政府メカニズムへのアラインメントといった点で、これら新興ドナーの動向を注視しているところです。他方、被援助国側からは「新興ドナー」援助の柔軟性や迅速性、また開発経験の学習効果といった観点から、「新興ドナー」の活動に期待する声も聞かれます。本研究では、中国をはじめとするアジアの新興ドナーについて、援助政策・メカニズム・体制の基本的実態を明らかにしつつ、新興ドナーから援助を受け入れている国からの視点で、新興ドナー勃興のインプリケーションを明らかにします。


